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家族ぐるみで仲良くしているMattと朝のビーチに行った。


愛犬のCharleyも。1歳ちょっとの息子Rachlanは、準備万全で待機していたらしいけど、今回は都合で断念。RIOはCharleyと久々の再会。Charleyはオーストラリア生まれのゴールデン・レトリバー。現在7歳。ダンディで優しい犬。


ビーチでのRIOはCharleyの後を追いかけてばっかり。
迷惑顔のCharley。






もちろんCharleyの行くところはどこにでもついていくRIO。
たとえ水の中でも。






ココナツの皮を埋めようとするCharley。
すかさずそれを狙うRIOを怒るCharley。






Matt+Charley+LOZ+RIO。






Charleyはさすがゴールデン・レトリバーだけあって、しかもビーチ育ちなので泳ぎが上手い。躊躇することなく、ガンガン海に入っていく。普段のCharleyはまるで置き物のように大人しいので、そのギャップが面白い。はじけ具合が、見ていてもよくわかるから。RIOもその後を追って必死についていったので、いっぱい泳いだ。いつの間にか泳ぎ方も上達している。そして何気にCharleyに追いつきがてら、背中に乗っかろうとするので、激しく怒られまくっていた。


途中、何匹ものラブラドールがだだだだーという感じで狂ったようにビーチを走り回っていた。ハスキーもちらほら。どの犬も、本当に嬉しそう。


週末のビーチは、幸福の絶頂にいるような犬の顔を沢山見れて、心がほんわかする。



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イングリット・フジ子・ヘミングさんの本を読んだ。







本のタイトルは「天使への扉」。Chapterごとにテーマがあって、それについて短いエッセーが書いてある。フジ子・ヘミングさんの事を知ったのは、1999年に大反響を巻き起こしたNHKのドキュメンタリー番組。当時その番組を見た時は、かなり衝撃的だった。何が衝撃的だったか、というと、彼女の壮絶な歴史もそうだが、とにかく見た目だった。ファッションも住む環境もインテリアも、そういった彼女を取り巻く全てが、まるでそこだけが異次元のように独特な雰囲気なのだ。ドキュメンタリーの内容はうっすらとしか記憶には無いけれど、彼女がゾロッとした服をまとって、一緒に暮らしている猫達を可愛がっている姿だけは、強烈に憶えている。


彼女のhistoryを少しだけ紹介すると(以下、光文社「天使の扉」から抜粋)、彼女の本名はIngrid Fujiko v.Gorgii-Hemming。スウェーデン人の父と日本人の母のもと、ドイツで生まれる。東京音楽学校(現東京芸術大学)を卒業後、ベルリン国立音楽学校に留学。長年にわたりヨーロッパで演奏家としての経験を積み、バースタインなどの一流の音楽家たちにその才能を認められるが、不運にも聴力を失ってしまう。聴力が少し回復してから、困難に耐えながらも欧州各地で地道なコンサート活動を続ける.......以下省略。


子供の頃から、どこの国でもいじめにあったらしい。結局日本からも国籍どころか永住権ももらえない「難民」扱いを受け、「どっこの国も嫌いだし、どこの国も好きだし、どこの国にも属していない。ずっと私は天国に属している」と言うフジ子・ヘミングさん。色んな国で経済的に苦労しながらも、捨て猫を助けることを止めず、敬虔なクリスチャンとして常に協会やユニセフ、動物愛護団体などへの寄付を怠らない。聖書には「自分のお金は自分の財布に貯めないで、天国に貯金しなさい」という言葉があるそうだ。実際に自分への贈り物に対しても、是非そのお金を寄付に使って欲しいと語る。一瞬、オノ・ヨーコを思い出した。彼女も夫であるジョン・レノンが射殺されたときに、ファンに対して「献花のお金をチャリティ基金へ献金して欲しい」と訴えた。オノ・ヨーコさんに関しては、スキャンダルを含めて伝記などにも色々と書かれているけれど、でも私は昔からとても興味を持っている。日本人として世界に誇れる女性の1人だとも思う。2人に共通している点をあえてあげれば、なんだろう。自分の生き方や美意識を断固として貫いているところや、何かこう俗世を超越した雰囲気というか、そういうところ。


そして、バーンスタインやカラヤン、ブルーノ・マデルナといった天才音楽家達との交流の数々。特にバーンスタインは大のお気に入りで、彼女曰く「水も滴るいい男」らしい。バーンスタインもカラヤンもとてもハンサムなので、音楽を聴きながらCDの写真を見入ってしまうことも多い。私は個人的に小澤征爾さんなんか、すごく魅力的に感じるし、特にタクトを振っている時なんか最高にセクシーだと思う。会社勤めの時、同僚に好みの男性のタイプは?と訊かれて「小澤征爾さん」と答えたら、しーんとされた。その後、どうやら私はおやじが好みらしいという風に解釈されてたみたいだけど、わかってないなあ、あのセクシーさは普通じゃないよ。奇遇にも小澤さん宅の近所に住んでるという同僚もいて、彼女曰く、普段は「ママチャリ乗ってる小汚い普通のおじさん」らしい。わかってないなあ...もう。


話がそれてしまった。何かで読んだが、カラヤンはこの世のものとは思えないほど良い香りがしたらしい。しかも「干し草の匂い」らしい。うーん。とにかく、フジ子さんはそんな天才達に実際に会って、バーンスタインからはいきなり 唇にキス!!!恋愛観もかなり飛んでる感じで、私はすごく好感が持てた。飛んでる、といっても彼女独特の感性があって、決して安っぽくないので、どの恋愛でもきっと良い経験をしてきているんだなあというのがわかる。そして彼女が奏でる名曲の背景には、そんな恋愛経験が密かに存在しているらしい。


その他、日本という国に対して思うことや、海外生活で感じたこと、自分の家族や動物達への愛について。そしてショパンやリストを弾くときの姿勢や演奏家としての心がけ...など、1人のピアニストの生き方から、様々な事を教えられた。また、この本の挿絵となっている彼女のイラストも、とびきり魅力的!


ちなみに、私の妹はかつてコンサート・ホールなどでパート・タイムの仕事をしていたが、フジ子・ヘミングさんは、スタッフがとても気を使う演奏家の1人だったらしい。邪魔な音には神経過敏だし、非常に気分屋でもあって、その時のノリ(?)で演奏もガラッと変わるらしい。でも、これもフジ子さんらしい、エピソードなのかもしれない。この本を読んだら、ますますそう思った。


是非いつまでもお元気で、そのチャーミングな人間性で、美しい曲を奏で続けて欲しいと思う。







「CLOSER」を観た。去年のクリスマスの時期、ロンドンの地下鉄のあちこちで、この映画のポスターを見かけた。その時以来、ちょっと気になっていた。結局映画館ではなくDVDで。



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大まかなあらすじは、単純に言えば男女4人の恋愛劇で、人間の持つ複雑な面、例えば動物的な直感を通した出会いや、またそれに絡む嫉妬や裏切りの繰り返しなどが、2組のカップルを通して描かれている。この物語は、もともとイギリス劇作家パトリック・マーバーによる、世界的に大ヒットした「戯曲」だったらしい。それにしても過激な内容なことよ。内容もそうだけど、台詞がすごいんだ。ものすごくリアリティーのある台詞...(イギリス英語のスラングを含め)。


キャストが良い感じ。ジュード・ロウとナタリー・ポートマン。そしてジュリア・ロバーツとクライヴ・オーウェン。この2組のカップルが複雑に絡み合う。ジュード・ロウは男前なので、どんな役をしても(たとえ薄気味悪い殺し屋やロボットとかでも)、いつもそれなりに様になっている。でもこの映画では、あまり魅力的に感じなかったのは私だけ?運命に翻弄されっぱなしの普通のイギリス男を演じているのだが。


でもそれはきっとクライヴ・オーウェンのせいだろう。彼の演技がすごかった。その口の悪さや低い声の迫力もさることながら、常に性欲や独占欲が愛情に反映し、異常に性に執着している医師という役柄が、あまりにも不気味で上手かった。ある意味とても孤独で哀しい人なんだけど、抜け目が無い。彼を見た瞬間、すぐに「King Arthur!!!」と喜んだのもつかの間、すぐに「おお、King Arthur...よ。」と呟くこと多し。映画館で見たキングのクライヴは正義感に満ち溢れ、神々しかった...のに。でも!私はこの「CLOSER」のクライヴ・オーウェンの演技を見て、彼の演技の幅広さに感服したのだった。あれほどの悪態をジュリア・ロバーツに浴びせまくった男優もこの先そう出てこないだろうな。LOZ曰く、「世界中の男が、妻や恋人に対して言いたくても言えない全ての悪態を言い尽くしている」らしい。


ジュリア・ロバーツは写真家の役。ちょっと地味な感じで、でもその疲れた感じがセクシーでもあった。そしてとてつもなく弱くて駄目な女を演じているのが新鮮。ナタリー・ポートマンはストリッパー。汚れ役なんだけど、天使のような顔で小悪魔的な魅力を強調。繊細で素直な心と冷たくて気まぐれな心の両方を備えた、不思議な存在。彼女の喋り方も結構独特で、可愛らしい。ちょっとだけ「レオン」のマチルダを彷彿させる。ま、この2人の女性の異質な魅力も、この映画のキーなんだろうなと思う。


映画の中で、ロンドンの街を観るのも、すごく楽しかった。ちょっとした公園の一角に埋もれた墓地や雨に濡れる歩道。夕方のテムズ川。そして彼らの住むフラットのインテリアなどにも、すごく興味をひかれた。


ちなみにこの映画で、クライヴ・オーウェンとナタリー・ポートマンが、それぞれゴールデングローブ賞のドラマ部門で、最優秀助演男優賞と最優秀助演女優賞を受賞している。2回観たら、また印象が変わる映画かもしれない。恋愛の残酷さと人間の弱さを見せつけられる、そんな映画。


ダミアン・ライスの挿入歌が最高。胸にぐっとくる。







RIOの起床時間は7時過ぎ。


日によってその時間も微妙に違うけど、7時半くらいには必ず起きて、まず私の方のベット・サイドにやってくる。その目的は...私のアイ・マスク捜索!それは朝を迎える頃には必ず枕やブランケットの隙間に埋もれてるので、それをクンクン探しにやってきて、見つけたらガブガブ噛んでどこかに持っていく。私が怒ってすぐに取り返しに向かってくるのが楽しいらしく、なんだか毎朝の日課になっている。それでも私達がベットから出てこない場合は、通りすがりにさりげなく脚の指を噛んだり、これ見よがしにブランケットを引っ張って、私達の怒りを買おうとする。


今日からスイミング。眠いけど、頑張って起きる2人。まだ午前7時前。薄暗い中を出発するけど、道はそれほど空いてない。バス停にも沢山の人が並んでいて、そう言えばこの時間帯にかつて私も通勤してたんだなあ、とかぼんやりと思った。セントーサ島へ入るゲートで6ドル払う(1人2ドル×2+車代2ドル)。空がやや明るくなってくる。窓を開けると、濃厚な緑のむせ返るような香り。RIOもクンクンと空気を嗅いでいる。ビーチが近づいてくると、ほんのり潮の香りがしてきた。タンジョン・ビーチへの駐車場に入ると車は1台も居ない。RIOにとっては2回目のビーチ。


最初の時はこんな感じだった。まだRIOが4、5ヶ月の頃。


初めての波にビビるRIO。顔は笑ってるけど、本当は怖い。

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初めて海で泳ぐ→水しぶきがすごい。

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疲労困憊...。

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涙目。

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そして今回は...じゃーん!

最初はちょっと波打ち際や海の中でも固まってたけど...

おもちゃがあれば、無敵!

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ビーチで過ごしたのは合計1時間未満。真水のシャワーで海水を落としてから、さっさと引き上げた。15分後には家に到着して、RIOは朝ごはん食べたら、ぐんにゃり。私とLOZは近くのカフェに出掛けて、焼きたてのクロワッサンとラテ。ほっと一息。


まず第一歩を踏み出した。




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最近はRIOの件があったり、車を買ったりで、毎日が慌ただしい感じで流れている。6月に引っ越しをして、その後はLOZのご両親がシンガポールに滞在してたり、私の日本滞在やLOZのアメリカ出張もあった。その間、調子の良い時はお互いに優しい言葉をかけ合ったり、労ったり、感謝したり。忙しい時だからこそ、忘れがちな「ありがとう」を言うことを心掛けた。でも気がつくと、小言が炸裂して、チクチクと嫌みを言ったりしてしまう私が居る。


以前はそんなチクチク攻撃(時にはパンチ)が原因でよく喧嘩していたが、最近のLOZにはそれが効かない。優しく落ち着いた感じで(ま、それが時々癪に触るのだが)、「そんな風に僕を傷つけようとしても、全然無駄だよ。」と、余裕しゃくしゃくで言うのだ。それで、キーッとなってまたさらに傷つけようと、どうにか喧嘩してやろうとヤケになって言葉を探す。屁理屈のオン・パレード。しかも話はどんどん飛ぶし、結局は感情を吹き出して、私だけがすっきりして終了、という最悪なパターン。


すんごくビッチだと思う、我ながら。英語で喧嘩すると、シャレにならないくらいダイレクトになる(それは私の語彙不足と英語力のなさで...)。しかし、喧嘩を売って逆に優しくされたら、なんか照れくさくてたまらない。自分の子供っぽさを見透かされてる、という感じで。地団駄を踏んで、自分の不甲斐なさに情けなくなって、と同時に彼の忍耐力と懐の深さが心に染みてくる。それにしても、心臓に毛が生えてきちゃったのかしら?それとも、鋼鉄の心臓になってしまったのか!!?


ま、要するに、私という人間を良く解ってきたなあと思うの、近頃(って結局は自分勝手に解釈)。操縦不能で、よく墜落してたからねえ、今まで。最近になって、コントロールのコツを習得してきた。


よしよし。


でもこれって喜んで良いのやら...







とにかく、今後の方向が定まりつつある。


LOZはまだTPOへの希望を捨てきれないようす。もう選択の余地がないのだ。この国で今、RIOは手術が受けられない...。彼が何よりも許せない事、それは今まで会った獣医さんの殆どが、「自分にはTPOの経験が無いので手術は無理だ」ということを認めず、なにかと理由を付けて「RIOには TPO手術が必要ではない」と言い張る点らしい。その理由も説得力に欠けているし、なんと言うか、もう身体全体からやる気の無さと自信の無さげ加減が滲み出てる、というか。逆に、同じシンガポールでも欧米系の獣医さんは、割と明確に自分が出来ることと出来ないことを認める。それに不確かな点には、わからない!とはっきり言えば良い。それがプロというものだろう。もうLOZはあらゆる文献や情報を読みあさっているので、CHDについてはかなり詳しくなっている。なので、ちょっとでも怪しい解説や、間違ったふうなアドバイスを受けると、もうその獣医さんに対して信用が置けなくなる。正直、獣医さんにとってはかなり手強い(それに嫌な)相手だと思う。でも犬のオーナー達はそうなることが当然だと思う。是非嫌なオーナーなって、獣医さんに嫌われるくらい自分の意見や疑問などをバンバン投げかけて、納得いくまでその場を離れないぐらいになって欲しい。少なくとも、自分の側に何にも知識が蓄えられてないので、獣医さんの言いなりになって、あげくの果てには泣き寝入りとかになって欲しくない。だって、それが自分の血を分けた子供だったら、全力を尽くして原因を突き止めようとするだろうし、病気の進行を阻止するだろうし、もうとにかく必死になるはず。当たり前な行動だろう。


獣医さんだけじゃないけど、お医者さんだって、もうこれはその人個人の「品格」の問題なんだなあ、と強く思った。人や動物を物(ひどい時はお金)として見ているそういった人たちは、もう態度からして品が無いもんね。威張るとか愛想が無いとか、そういう表面的なことよりも、プロとして自分の品位を保つ仕事をしている人は、きちんと対応も丁寧だし、何よりも私達に安心感を与える。言葉や態度にも筋が通っている。だから、例え期待していた程の診察結果ではなくても、その人に会っただけで気持ちが落ち着いたり、癒されたりする。そういう人が本物だと思う。


で、最後に訪れた獣医さんは、予約を入れずに"walk in"で行ったので、1時間半くらい待たされた。この獣医さんも、ご近所さんの推薦の人。名前が欧米系だったので、てっきり白人を予想していたら、外見はアジア系だった。でも、中身は欧米人そのもので、オーストラリアのシドニー大学で教えていたらしい。今まで会ったどの獣医さんよりも、独特なオーラがあって衝撃的だった。まず、話す事が明確で、説明がわかり易い。そして自分の意見をはっきりと示し、良い事は良い、悪い事は悪い、と曖昧さがない。これって、聞く側にとってはすごく楽なことなんだなあ、と改めて感じた。彼自身がホリスティック医学的な観点を支持していることもあり、手術によって部分的な原因を取り除く事よりも、食事や運動、環境など全体的なバランスを整えることによって治療していく方が、長い目で見て効果がある、と言われた。もちろんLOZによる、TPO等の手術法に関する質問にも、潔い回答。まず「自分はもうTPOやTHR等の手術自体を支持しない立場(かつては手術をした経験もあるらしい)である」ということ。「これらの手術が及ぼす害(ホリスティック的な観点から見て)がある」ということ。→この点に関しては、LOZも疑問があるらしい。確かな人が高い技術で手術をすれば、術後問題ない犬も、実際に存在している。ただ、彼自身が「手術はしない」、という立場なら、それはそれで良い。そして、「サルベージ手術ならば、RIOにとってこれからいつでもチャンスがある」ということ。


何よりも、肯定的に私達へアドバイスをしてくれる姿勢に、ちょっと感動する。

(1)少なくとも週3回は必ず水泳をさせること、もしこの3回以上ができないのなら話にならない。一回15分で良いから必ず泳がせる。

(2)リーシュをつけて散歩をしない。

(3)階段の上り下りをさせない。

(4)必要なサプリメントを与える。

これが獣医さんの出した条件。これをきちんと守れば、4週間後には見違えるように変わってくる、と言われた。しかも、もしもっと早い時期にこの条件を守っていれば、今のような状態まで悪化する事はなかっただろう、とも言われた。水泳は遊び程度に経験させたくらいで、後はリーシュをつけての散歩/訓練は当たり前だったし、階段なんて新居に移ってからというもの、怖いくらい上の方から床に向かってジャンプをしていたし、上る時もいつも自分が一番になる勢いで駆け上がっていた...。もしかするとRIOの股関節に負担がかかる条件がてんこ盛りだったんだなあ。気付かなかったなあ。


で、この時点から私達は、生活スタイルを変えていく事を強く心に誓った。次のアポイントメントは4週間後。それまでに、週3回以上水泳を中心とした運動と環境(食事制限や階段)に気をつけながら、RIOの筋肉増強を見守りたい。今回は、何よりもそのドクターの「私を信頼して、一緒に治しましょう!!!」という前向きで情熱的な態度に、心から救われた。それはLOZも同じ気持ちだと思う。帰りの車の中でも、かなりホッとしたのか、今まではガチガチだった肩の力がやや抜けていたような気もする。


翌日の早朝、私達はまだ人影もまばらなセントーサ島のビーチに居た。




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二回目の診察は、約1週間後。そしてそれから連日で毎日違う獣医さんを訪ねた。その理由は簡単。私達が満足する診察結果が得られなかったから。


シンガポールで唯一TPO手術の経験があるという獣医さんにも会った。CHDの症例に関してはベテランという話だったけど、診察自体は適当だったし、実物がするそばに居るのに、RIOの歩き方や座り方をチェックすることもなく、しかも基本的な触診さえも、こちらが誘導しない限りはしようとしない。x-rayを見て開口一番、「かなり重度なので、TPO手術は勧めない。」とさえ。LOZもその意見にはびっくりして、何度も質問して確認をとったが、結局彼の見解によると、「RIOの股関節は、TPO手術が可能な角度を通り越している」らしい。


TPO手術について色々と調べてみた。「Triple Pelvic Osteotomy」の略で、日本語だと「三点骨盤骨切手術」という呼ぶらしい。 関節の受け皿である寛骨臼は寛骨にある。その寛骨は、腸骨、恥骨、座骨の3つの骨が癒合してできたものなので、要はこの3つの部分を切り取る手術らしい。切った後は回転して固定し、大腿骨頭に深くかぶさるようにするとのこと...うーん、イメージするのが難しい。でもアメリカを含めた欧米諸国ではかなり馴染みのある手術法で、回復率もその質も抜群に高いと言われている。ただ、基本的には1歳を過ぎた犬には適用しないのが一般的なので、(骨が成長段階である、というのがこの手術の原則らしい)9ヶ月のRIOには残された時間もあと少し。LOZの頭を狂わせているのは、この時間リミットにも原因があるのだった。果たしてRIOの症例ではTPO手術が可能なのか、いや絶対に可能なはず!!!という一途な願い。その後、LOZはアメリカのCHD専門医2人にメールと電話で診察を受けた。その結果は、TPOは可能な範囲だという回答。希望が復活。


次に訪れた動物病院では、オーストラリア人の獣医さんが担当。ここはもともと評判が良かった。しかし「うちではTPO手術はしない。」と単刀直入に言われて、結局は「私達の要望には対応できない」という理由で、x-rayの状態を説明することもなく、RIOへの触診もせずに終わった。診察料も受け取らなかった。


彼(そして、シンガポール大半の動物病院)が主に行うHDの手術法、というのが「大腿骨頭切除術 Excision arthroplasty (femoral head and neck ostetomy)」というもの。それは「サルベージ(救済)手術」の部類に入る、つまり変形の進度が激しくて、かなり重度なHDの症例に適用する手術のひとつ。大腿骨頭を切除する事で、骨と骨の接触を無くし、根本的な痛みの原因を取り除くというもの。ただ切除した後は、その部分が治癒する過程で偽関節を形成するので、正常な関節の機能というものは期待できない。が、激しい運動(フリスビーやアジリティなど)をせず、散歩を含め、普通の生活の範囲での運動であれば問題はないらしい。


ただ、名前のごとく「サルベージ(救済)」する手法を取るということは、正直、最終手段と言っても過言ではないと思う。RIOの脚がこの先さらに悪くなった時、苦痛を訴えたり、歩行が不自由になった際には、もう躊躇せずに、私達はサルベージ手術を選択するでしょう。でも、今のRIOにそれは必要がない。あと注意する点としては、この手術は体重が20kg未満であることが好ましいとされている。従って、大型犬の場合は厳重な体重管理が必須の条件。RIOは現時点で約30kgある。


例えばもう一つの「サルベージ手術」である「股関節全置換術(人工股関節置換術)Total hip replacement THR」。これは大腿骨頭も寛骨臼も両方を、人工のものに換えるという術法。術後は早期に痛みも取れ、95%は正常の犬と同等の股関節機能、運動能力、運動耐用性を得られる。ただ費用は高額。RIOに適しているのは、おそらくこの手術。けれどこの術法は、身体の成長が完全に止まった段階で行うのが一般的なので、RIOにはまだ時間の猶予がある。なので、それまでにサンプリメントや運動で日常生活から病気を守っていく点が大事。


実はシンガポール獣医協会の会長であるというドクターにも診察を受けた。彼の判断もRIOは緊急を要する程のHDレベルではないと見られるので、今後は運動や体重管理をしながら様子を見守って行くのがベストでは、と言われる。TPO手術に関しても、かなり消極的な意見。おそらく、この国でTPOやTHRができる技術を持った獣医さんは居ないに等しいのでしょう。ついつい欧米/日本の状況や選択肢の広さと比較してしまいがちだけど、しかしこの小さい国で、ましてここ数年でコンパニオンとしてペットを飼うようになった国に、そんなCHDの専門医の存在を期待する方が無理な話なのかもしれない。


もしこの国でリオが1歳までに受けるのが原則であるTPOが無理ならば、このまま生活スタイルを調節してあげることに専念することにしよう。そして、今後のことはわからないけれど、もし数年後に手術が必要になった際には、別の国で、今度は沢山の経験を持ち、自信を持って手術をして下さる獣医さんにお願いしたい。そう2人で話し合った。


結局この数日間で、かなりこの国の現状を目の当たりにすることができた。シンガポールではTPO等の「予防的な手術」の存在は全くもって薄く、FHO(大腿骨頭切除術)に代表される「サルベージ(救済)手術」が、一般的だということ。THR(Total hip replacement)でさえ、出来ると言われている獣医さんは1人だけだ。経験だって数えるくらいだろう。そんな人に私達はRIOを手術してもらいたくないのが本音。いずれにせよ、サルベージ手術は、リオにはまだ必要だとは思えない。


まだちょっと不安の残る中、少しずつ答えが見え始めていた...。




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車を買った。


そしてそれはすでに家の前、フロント・ガーデンの横にすっぽり収まっている。RIOを動物病院に連れて行った日から約1週間後には、もう車を買っていた。正しく言えば、2回目の診察前日には、もうあった。なので、2回目の動物病院にはRIOを車ですすっと運べたので、すごーく楽だった。LOZもかなりご満悦のようす。


最初は新車(日本車)などを見たり、あとは候補として中古VWのbeetleがあった。この国で車を購入することはまずあり得ないだろうと思っていたので、正直現実感がわかなくて、実際に車を試乗しても、ふーんという具合で終わる。そんな煮え切らない私の態度に、LOZは数字で購入プラン(ローンの金額など)を示してきたり、車を買ったらこんなこともあんなこともできるんだよ~、甘い言葉で私の気持ちを盛り上げようとしていた。でも!高いんだよね、車。それでも今はCOE(Certificate Of Entitlementー車を利用する際の証明書)の値段が大分下がったので買い易くなったとはいえ、その値段でまた車一台買えるんだよ、海外では。その他road taxなどのもろもろの税金や保険がつくと、もう笑えない値段。でも、実際問題、今私達が住んでいるのはこんな制度のある国なので、他国の現状と比較しても仕方がない事。車を買える、という選択肢があるだけ感謝しなくてはならない。



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で、結局選んだのが、こんな車。とてもクラシックなMercedes。親しくしているオーストラリア人のファミリーが、2人目の子供が生まれたタイミングで車を買い替えたので、それまで使っていた車を安く譲り受けた(といってもディーラーを通してだが)。1983年製なので、20年以上古い車だ。不思議なことに、この国では中古のMercedes/BMV/Jaguarといったブランドは、日本車のそれとは破格に値段が安い。ま、COEの有効期間(新品だと10年)も大きく関係してるし、ちなみにこの車はあと3年。あとは古さの度合いにもよるけれど、このくらい古いMercedesでも十分な使用感で、全然問題ない。今までのメンテナンスが良かったのか、それがこのブランドの良さなのか。


ちょっと前に、古いMGBにも試乗してみた。イギリス人のMGB愛好者が自分でエンジンや内装にも手をかけて、本当に丁寧に使っていた。車を見るだけで、彼の愛情が滲み出ているのがわかる。結局その車はセカンド・カーとしては最高だけど、実用的ではない分、私達が今求めている車ではないので諦めた。もっと、MGBを惚れ抜いて、好きで好きでたまらない!という人に乗って欲しいという気持ちもあったし。でも一目見てドキドキするくらい格好良かった。今も片思いの気持ち...。今夜もドライブ中に、古いMGBを見かけた。塗装がとんでもなくキッチュ(ベースは白で、しかも花柄だった)ですごく目立ってる。まるでオモチャの車が走っているみたいで、見てて笑えた。追い越しながら、運転している人をチェックしたら、欧米人ではなくチャイニーズ系だったので少し驚いた。やるじゃん!!!って心の中で褒めてあげた。


ということで、また新たに迎えた家族。大切に使ってあげよう。というか、私はマニュアルは運転できないのだが。でも、その気になったら免許も取ろう。そしてRIOを連れて、この車と共にどんどん楽しい思い出を増やして行きたい。




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ここ数年は、お茶を良く飲むようになった。


「お茶」とひとくちに言っても、紅茶から日本茶、そしてハーブ・ティまで色々ある。紅茶はロンドンに住み始めてから、良く飲むようになった。LOZの実家を訪ねると、1時間おきくらいの間隔で"Another cup of tea?"と訊かれる。そして何でもないスーパで買える安いティー・バッグが、それはそれは美味しいのだ。形も丸くて、よ~く出る。日本の実家にも一度それを持って帰ったところ、えらく好評で、イギリスお土産はそれだけで良いと言われた。


シンガポールで紅茶を飲むと、なんか味がいまいち。どちらかと言えば、コーヒーの方が美味しく感じる。何故だろう?気候のせい?なので、紅茶は大量に作っては冷やし、アイス・ティーにしている。あとは爽やかなジャスミン・ティーやプーアル茶は定番。さらに母が遊びに来た時に持って来てくれたルイボス・ティーは、今私が一番気に入っているお茶。南アフリカ共和国原産のマイルドな味で、かつカフェイン・フリーの美味しいお茶。おすすめ。


ヨガを始めてから色んなハーブ・ティーにも凝りだした。例えばDr Stuart'sから出ている 数あるティーの中でも、Rosehip Shellsや Hibiscus Flowers、そして Echinacea Harb やBlackberry などが含まれている「ECHINACEA PLUS」、それはちょっと酸味のある味で、身体が目覚める。あとはショウガやチョウセンニンジンなどを配合したティー、「ENERGY PLUS」もあり、これは胃に優しい感じ。そして発汗作用が抜群。Cranberry&Raspberryのティーは、もうこれで3箱目。愛用している。これらは全てGNCというアメリカ系のサプリメントや健康食品を取り扱う店で購入できる。


カモミールやペパーミントなどはハーブ・ティーの王様、という感じで日常生活の中でも、ちょっとしたナチュラル・レメディとなってくれそうだけど、単純にお茶の時間を楽しむなら、少しは変化に飛んだハーブ・ティーを試してみるのも面白い。先月帰国した際に友人から頂いた「レモングラスグリーン」というハーブ入り煎茶(by Tea.Pi.O.)は、色がとても鮮やかで奇麗。レモンに似た香りと共に楽しめる。こういうプレゼントって、すごく嬉しい。お茶の時間も贅沢になるのです。彼女のことを思い出しながら...。







最近、かなりショックな事件があった。


先週末にトレーナーさんが家族や友人を連れて我が家に遊びに来た。その中には犬が4匹が含まれていて、RIOも大興奮気味。豆柴の女の子からはみっちり怒られた。そうしているうちにトレーナーさんの一言で、RIOの歩き方に異変が起きている事に気付いた。右脚を少し引きずっている。久しぶりにすごく興奮したので、捻挫でもしたのかなあ、と思った。以前にも床に滑って変に脚を捻ったりすることがあったから。その際はRIOが鳴き声を上げたので、すぐにわかった。けど、今回は本人もあまり痛そうにはしてないし、座り込んだりすることもない。散歩にも行きたがるし、ゲートの前を嫌いな犬が通るとすぐに怒りに飛んで行く。んー、ちょっとしばらくは様子を見てみた方が良いかも、というアドバイスでその場はそれで収まった。しかもその夜はそのトレーナーさん宅での「関西(お好み焼き/たこ焼き)パーティー」なるものにもRIO付きで参加したりした。そこでも嫌がらせに近い元気ぶりを発揮していた、彼。


その後は、念のためx-ray検査をした方が安心かもということでかかりつけの動物病院へ予約を入れる。そこは近所で徒歩圏なのだが、x-ray設備が無かった。車で10分程度の、支店のクリニックへ。シンガポールのタクシーは基本的に犬もケージに入れていれば(小型犬なら抱いていても)乗せてくれる場合が多い。ただ、運転手の人種にもよる。何度か犬好きの中国系の人にも出会ったが、一般的に犬を非常に怖がる傾向がある。マレー系はほぼ完璧に犬は駄目。宗教上の理由らしい。一度、ON CALLして迎えに来た運転手がマレー系で、こちらは電話で事前に犬連れだという旨を伝えていたので、断固として乗った。そうしたらもう猛然と窓全開にして、運転中には何かものすごい怪物が後ろに居るような視線で、ちらちらと後部座席を睨みつける。しかも私達が降車した後には、すかさずトランクから掃除セット一式を取り出して、シートを消毒し始めた。密かに祈りを捧げてたかもしれない。呪われてなきゃ良いけど...。だってまだその時RIOは子犬だよ。そりゃ、ちょっと黒くてイカツイ顔だけど。きっと今日という日は彼にとって、「悪魔の手先」になったくらいの大罪なのかもね~、と2人で失笑した。それぐらい神経図太くないと、シンガポールで犬と暮らしていけない。


とにかく、多少高くてもロンドン・タクシーを利用する。サービスも良いし、車内が広いので大型犬も余裕で乗れる。ただ不便なのは、台数が限られている為に電話をしてもすぐには来ないという点。緊急の際には非常に困ってしまう。その日は時間指定で予約を入れた。RIOは車が好きなので、すぐに飛び乗る。クリニックに到着し、受付。体重を量ると約30キロ。2週間前よりも2キロ増。周りには色んな動物が居るので、RIOも興奮気味。特に猫にが目が釘付け状態。RIOの番になり、インド系の女医さんが担当になる。LOZがざっと状況を説明する。x-rayを受けるにも当然麻酔が必要なので、日を改めて去勢手術も兼ねたらどうかと提案されたが、"buy one, get one free"じゃないんだから、その辺はきちんと段階を踏んでやろうということで、今日はx-rayだけを選択。RIOはためらうこともなく素直に奥へと連れて行かれた。


待ち時間の間は、LOZはそわそわと落ち着かなくて、近所で朝食を食べている間も機嫌が悪かった。私がどの漢方スープを食べようかと悩んでそれを相談しても、まるで変人を見入るようにふ~、とか呆れている。ぶつぶつ何かを言っているので、耳をそばだててみると「頑張って、RIO!」と日本語で呟いていた。きゅん。いつもは異常に反応する、食用のケースに入った生き物(カニなど)にも、今回は生まれて初めて見る「食用ガエル」だったのにもかかわらず、カエル愛好家の彼としてはいまひとつ(というか、ぜんぜん)反応が鈍い。「とにかく戻ろうよ、お願い。」と急かされた。


x-ray検査の結果に、言葉を失った。予想以上にRIOの右脚は悪く、左右の関節部分の形が素人の私にさえはっきりと分かるくらいに異なっている。左側はきちんと収まっている部分が、右側の同じところで飛び出ている。思わず、嘘...と呟いてしまう。これがRIOの脚なのかと思うと、ショックで感覚が無くなっていく感じ。CHD(股関節形成不全)は一般的に大型犬でも、ゴールデン・レトリバーやラブラドールに多くみられることで知られている。ロットワイラーもアメリカだと飼育頭数も多いことながら、確率的にも非常に高い。CHDを防ぐポイントとしては、やはり犬のブリーダーさんが、徹底的に血統からCHDの確率を除外するということ。その上できちんと身体的に保証のある犬をマーケットに出す、という事が重要。でも、この病気は「環境」もその要因であるという風に言われている。固くて滑りやすい材質の床だとか、子犬の頃から過剰に与えられた栄養などが、後天的にCHDへと促すらしい。


RIOは果たして、先天的にその病気を持っていたのか?それとも後天的になってしまったのか?この疑問が、私の頭をぐるぐると旋回する。しかも何度もしつこくLOZに問いかけるので、心配するポイントがずれてる、と怒られた。例え、シンガポールのブリーダーさんがいい加減、もしくは無意識に、もちろん健康面や血統などを考慮することも無しに、ブリーディングしているとしても、私達はRIOを選び、RIOは私達の存在が生きている全てなんだから、今はこれからの事だけを考えなきゃ駄目なんだ、そう、それは分かってる。今後は少しでもRIOの症状が悪化しないような環境を作ってあげることが大切なこと。長い散歩は控えなくてはならないので、数を増やしてこまめに外に出してあげるなど、少し方法を工夫して、彼の若さとストレスを発散させてあげなくては。取りあえず、次の診察で今後の予定がはっきりする。ずばり手術をするのか、それとも、サプリメントを内服しながら脚の筋肉を強化する事で、様子を見ていくのか。実際にメスを入れずに、運動などによって生活に支障のないくらい回復している犬達も存在している。


LOZはもう、気持ちの中では「手術」の方向で整理が出来ているようす。性格的に、悪いところは完璧に治すまでだ!というタイプだから。しかも今日は動物病院からの往復に色んな手間がかかってしまったことにも、ふつふつと不満が募っているらしく、早速午後からは連絡があって、車のショールームを見に行こうと誘われた。展開、はやっ!!!


RIOの手術(いや、次回の診察)前までには、そんなお買い物までしそうな雰囲気で、私はただ必死に状況の展開についていくのみ...であった。





Rio(b&w).JPG





日本で買ってシンガポールに持ってきた本をこのところずっと読んでいる。暇を見つけて色んな本屋に立ち寄っては、心惹かれたものを選択。そして今、読む本を選ぶ瞬間に至っては、まるで箱の中から丁寧に作られたチョコレートを1つずつ吟味する時のような幸せ!


その中でお薦めの本を紹介。

よしもとばなな/パトリス・ジュリアン著
「News from Paradise-プライベートフォト&エッセイ-」


banana(blog)




2人の文通形式でつながっていくんだけど、その文通の中身が濃くて面白いんだよね。今、日本と日本人に足りてないもの、失いつつあるもの、そして人間として気付いてないものをパトリスさんは外国人の視点から、そしてばななさんは作家というよりも母親としての立場から、かなり率直に表現してる。私は表参道の「クレヨン・ハウス」で見つけて即購入してしまった。中に収められているのプライベート・フォトも、2人のささやかな幸せを象徴しているようで笑顔を誘う。


こういう観点に共感できる日本人が1人でも増えてくれれば、日本はもっと住みやすくて素晴らしい国になるのに…って思う。そして私自身も色んな面で見落としがちなこと、例えば「掃除」や「ゴミ出し」ひとつにしても、それをどういう心掛けですれば日々の生活に潤いを与えられるか、などを気付かされた。まさに、自分の心構え次第で、パトリスさんの言うところの「生活はアート」なのかもしれない。例えばお手伝いさんを雇うことで掃除という作業から解放されることは、ある意味効率的だし、特に仕事や子育て等で多忙な人にとっては救われる部分が多いと思う。もちろん単に掃除が苦手な人がお金で労力を買うことだってあり、だと思う。シンガポールでは結構一般的にmaid/cleaning ladyを利用する家庭が多い。ただ、掃除をすることで得る様々な充実感(もちろん疲労感も)や、その作業から気付く/学ぶことって数えきれないほどある気がする。そして何よりも、自分で掃除した部屋は気持ちが良い。自然と住空間に敏感になるし、そこに愛情も感じるようになる。こんなことを書いたら、独身時代、実家では数えるほどしか掃除をしなかった私を、母は皮肉るかもしれないな~。しかも今だって「ゴミ出し」はかなりいい加減で済まされている。でも、今が気付いたときなので、今からが大切!だと勝手に思うことにする。


あと、ばななさんの「変なことには変だ!と言おう。」という意識にも考えさせられた。私を含め、日本人は「変なのでは?」と思っても、大概は状況に流されたり、体裁上気にしないふりや見ないふり、が多いと思う。「変なこと」に多く遭遇するのは、かなりストレスでもあるので、私は比較的自分がストレスを感じるだろうなと思われる作業やイベントには構えてしまうし、出来るだけ控えたりする傾向がある。誰でも嫌な環境に自分を置く状況はストレスだと思うけど、私は「どうしてそれが?」ということにも気が滅入ったりしてしまうことがある。人間関係を含めて。例えば交友関係的に浅くて広い、楽しい状況でも、自分の中で納得できない「変なこと」をばんばん発見してしまうのだ。それが面白いこと、で済まされる場合は良いけど、どんどんどんどん不愉快な世界に入っていく場合もある。もうそうなると、えらい疲れる。そして回復するまでに数日要したりする。昔から顔見知り程度の人達の集まりって、サークルにしろゼミにしろ苦手だった。ハイな感じもローな感じも、どちらも居心地が悪かったし、だからと言って自分の好きなように過ごしてると、「自分勝手/自己中心的」のレッテルを貼られてしまう。なので、大学時代はよく留学生とつるむようになり、その自由な雰囲気の中に自分の居場所を感じた。もともと留学生は、大学でもどちらかと言えばアウトサイダーなので、その頃はあまり言葉が通じなくても、何となくいつも転校生だった私の感覚としっくりとくる。彼らのパーティーも、皆が一斉に何かをしなくちゃならない、というものは一切無く、各個人が自由に飲んだり踊ったり話し込んだり眠り込んだり音楽を聴いたりTVを見たりゲームをしたり、などなどぐっちゃぐちゃな感じで、それがとても普通に感じた。「変なこと」だとはちっとも思わなかった。逆に、オールラウンド系のサークルの旅行に参加した時には、新入生がお弁当を作ってくること~、とか。先輩のご飯茶碗が空になりそうになったら、すかさずおかわりを訊くこと~、とか。先輩からお酌を受ける時は、自分の名前と学科を述べて、「よろしくお願いします!」ということ~、とか。すべてが「はあ~!?」という具合。みんな普通にそれをやっていたし、私も鳥肌を立てながらやってみたけど、本当に「変」なことだらけで、正直びっくり仰天した。今思うと、まさにプレ会社社会の仕組みだな、と思うが。


基本的にばななさんは、日常生活上、サービスを受ける立場としての「変なこと」に対して、猛烈に怒ったりしている。お店やレストランでの「変」なサービス。彼女自身、長年カフェでウェイトレスとして働いてきたこともあって、その辺の評価には厳しいらしい。でも、愛を持って怒っているので、それはすごく日本社会のためになるなあ、と思う。すごくややこしい敬語のような造語(?)を含めて、日本の常識も危機に瀕しているかのように映るけど、でもその中で、可愛くて素敵な人達も確かに存在している。そういう人達が環境問題や本物の美感に目覚めて、独特であり得ないような素晴らしい作品を作り上げたりしている。本、雑誌、カフェ/レストラン、ブティック、花屋、そしてギャラリーや癒しのサロンなどなど。そう、まさしく彼らの作品!形だけではなく、心から自分の作品に愛情を持って取り扱っているところが本物。そこから受け取るエネルギーってものすごい幸せなものだし、今後もそういう空間がどんどん増えれば幸せ指数が向上するのでは、と希望が持てる。日本のあらゆる「変」を浄化していって欲しい。真摯な願い。


LOZと生活するようになって、彼の常識からして「変なこと」にははっきりと「それ、変!」と言うことの大切さと、その難しさを目の当たりにした。彼はあまり人に合わせる、ということをしないし、でもそれなりに社交性もあるので友達も多い。特に仕事関係では物理的な利害も生じるので、自分のポリシーを明確にしつつも、「変」だと思うことには真っ向にぶつかっていく。その際ユーモアのセンスも忘れずにいるので、その点は偉い。けど、その姿勢って、時には敵を作って大変だった。でも最終的には自分自身に嘘をついていない分、解放されているようにも見えた。彼にとって私はidentityが強い人のように見えるらしいが、そうかなあ。いつもぐずぐずして優柔不断だし、「変なこと」にきりっと立ち向かえないし、苦手なことは後回しだし...はいつまでたっても変わらないな、はい。そして自分の譲れない部分の線引きだけはきっちりしよう、と思うけど、感情的に不安定な時は、その辺も曖昧になる。で、後でがっくし後悔して、落ち込んだりもする。結局、まだまだ人間ができていないのです。


ということで、かなり脱線して色々と書いてしまった。とにかく、この本をきっかけに自分の生活意識を確認したり、友達やパートナーと話し合うことがどっさり生まれると思うよ!







愛知博を後にした後、名古屋のホテルに向かった。


先日名古屋に到着した際に、ホテルを確認したのにもかかわらず、また迷う。先日地図を広げて、ああでもないこうでもないと、地図をくるくる回して騒いでいたら(特に母が)、通りがかりの好青年が「どこに行かれるのですか?」と爽やかに訊ねてくれた。「○○ホテルなんです。」と答えると、ササッと背広の内ポケットからコンパクトな地図の本を取り出し、さらさら教えてくれた。そしてその地図には沢山の付箋がついていた。それがあまりにもスマートで丁寧なので、名古屋の男性をちょっと見直したくらいだ。ま、彼が名古屋人とは限らないが。不動産屋さんだったのかなあ。


とにかく、その夜も同じ感じで地図を取り出して、またガーガーと騒いでいたら、今度は居酒屋から出てきたおじさんが「どこ探してるの~?」と訊いてきた。もうすっかり出来上がっている様子。母がホテルの名前を言ったもんだから、それからが大変。自分が次に行く予定の飲み屋がそのホテルの近くなので、案内してくれるというのだ。しかもその飲み屋というのは外国人ホステスの居るbarらしく、「いやー、これから英会話の練習なの!」(この『なの!』の部分がやけに大声)「もうこれだけは完璧よ、英語で。Nice to meet you, Where are you from? and How much?、がはははは。」しーん。これって、すごいセクハラだと思うんだけど。私の考え過ぎ?しかもそれから自分の愛犬の話などに飛び、最後にはそこに飲みに行かないかとまで。そのおじさんは、きっと素面だとただの愛嬌のある普通の人なんだろうなあ、と仕方なく同情して、別れを告げた。コンビニでおにぎりを買う。母はビールとおつまみを買っていて、そのチョイスがほんの一瞬そのおじさんを記憶に呼び戻させた。


日本のコンビニに売ってるおにぎりって、最高!と思いながらくつろぐ。LOZも、そして私の友人であるほとんどの外国人が虜になっている、コンビニのおにぎり。先日も今年初めて日本を旅行したというフランス人の知人とコンビニのおにぎりの話で盛り上がった。そりゃ、握りたてのホカホカおにぎりには敵わないけど、でも、種類も質も世界に誇れる名品だと思うよ、私は。帰国する度に、新種類を発見するのが密かな喜び。


あっという間に朝。遮光カーテンって、なんでこう素晴らしく暗闇。思いっきりチェックアウト30分前に目覚めてしまった。急いで朝食を食べに行く。名古屋はモーニング・サービスが有名だと聞いたので、ここのホテルの朝食もちょっと期待していた。が、それほどでもなかった。バイキング形式のごく普通の朝食。それなら近くの喫茶店で、地元の人のようにモーニング・サービスに挑戦すれば良かった、と2人で後悔する。そしてチェックアウト。


向かった先は、犬山市。前々から「徳川美術館」が候補に上がっていたが、「犬山城」の評判が良くMも推薦してくれたので、そっちにした。母は娘時代に一度訪れたらしいが、もうあまり記憶にないということ。名鉄名古屋駅から名鉄犬山線に乗って40分。1両目の前方ガラスがぐーんと開けていて眺めも良く、なかな雰囲気の良い電車だった。途中LOZから携帯に電話が入り、RIOとのラブラブ生活を語ってくれた。基本的に午前中は家で仕事をして、午後からミーティングを入れたりオフィスに行くというサイクルにしているらしい。「シングル・マザーの気持ちがわかるよ~。」としみじみ言っていた。大切な電話会議中でも、ふと振り返ればクッションを獲物にしているRIOの姿が見えて、おちおち集中できなかったり、姿が見えないのでフロント・ガーデンを見ると、立ち上がって柵越しに隣の家の犬に誘惑されていたり(隣の家には可愛いキャバリアの女の子が居る)、などなど。私が大切に育てていて、大きな鉢に植え替えたばかりの植物も、ぜーんぶ引っこ抜かれたらしい...。とほほ。でも世話がかかる分、一緒に居れば居るだけ理解も愛情も深くなり、さらにママくさいLOZ。でもママくさい割には、あまり掃除をしていないらしい。「家に戻った時、怒んないでね。」と念を押されているうちに犬山市に到着。


駅から木曽川に沿って、広くて静かな歩道を歩く。木曽川では「うかい」が有名で、その起源は今より1,300年前にさかのぼるらしい。その日はライン川下りをする船をちらほら見かけた。ちなみにMは先日犬山市からの招待でドイツ館のスタッフらと、「うかい」を見学したみたい。鵜にMが近くに寄っていて、こわばっているのか喜んでいるのか、微妙な笑顔の写真を見せてもらった。鵜は黒光りしたかなり大きい鳥なのだった。遊歩道を進み、高台にお城が見えてくる。小振りで上品な佇まいは、話に聞いてた通り。素晴らしく美しかった。ニワトリが放し飼いされている神社の、境内の脇にある階段を上がって行くと、お城の門に辿り着く。


ここで、「犬山城」の沿革をすこし(パンフレット参照)。「犬山城」は別名「白帝城」とも呼ばれ、1935年より国宝に指定されている。日本で国宝に指定されているのは全部で4城(犬山城、彦根城、姫路城、松本城)。その中でも最古のお城らしい。作ったのは織田信長の叔父(織田与次郎信康)で、歴代城主であったのは成瀬一族。その後一時は廃城になったり震災や台風などの天災などでダメージを受けつつも、修復・解体修理を繰り返して今現在に至っている...。構造形式は「望楼式」という中世のものらしいが、それを彷彿させる「武者隠」や「武者走り」、そして「石落としの間」がある。階段がとてもつもなく急な角度で、殆どハシゴ状態。まあお城なので、敵に簡単に侵入されては困るという造りなのだろうが、今のお年寄りにはとてもシビアな構造だと思う、正直言って。私がまずこのお城でとても気に入ったのは、4階まで登るとそこには四方に、約半間くらいの大きさの回廊/広間があり、休憩には最高だというところ。小さな窓からは絶景が見える。もちろん天守閣まで行くとさらに外に少しだけ張り出した部分をつたって、どきどきしながらも(けっこうボロいので)素晴らしい景色を堪能できる。ただ、その素敵な広間では、床に座って古い木材の懐かしい香りとひんやりする感触を味わえる。思わず母と「九州の家の匂いだね~。」と顔を見合わせた。のんびりだらだらと話をして過ごし、いつまでもそこに居たい気持ちにさえなった。このひとときだけで、犬山市まで足を伸ばしたかいがあったと言ってもいいくらい。


その後は城下町の古い街並を散策してみる。平日だったので全体的に静かだったけど、途中、何軒か骨董屋さんに立ち寄った。ある店は奥から浴衣をさらっと着こなしたとても奇麗な女性が出て来た。いつも着物で商売をしてるのかしら、と思ったけど、もしそうだとしたら格好良い!!その店は骨董屋にありがちな古めかしくてごちゃごちゃした雰囲気とは正反対で、どちらかと言えばブティックのような感じ。品数はあまり多くなくて、江戸から明治時代にかけての浮世絵など、版画類が多かった。彼女の趣味なのかな?旦那さんが店主のようだったけど、こんな感じで夫婦共に、城下町で素敵なアンティークに囲まれて暮らすなんて、なんて粋!!彼女の佇まいや説明の仕方などからも、生き方にプライドを持っているんだろうなあという感触を受けた。その他、古い民家を改築した雑貨屋さんに入ると、おばさんがその民家についての説明をしてくれて、ついでにということで奥にある昔の台所や、様々な道具、そして苔で覆われてキラキラ光る可愛いミニ日本庭園などを見せてくれた。2階も見学していって下さい、と言って頂いたので2人で遠慮なく階段を上がってみた。そこは懐かしい感じがする、居心地の良いサイズの日本間で、昔はこういう場所で物を丁寧に使って暮らしてたんだなあと思った。一瞬、感覚がタイム・スリップ。おばさんによると、昔はこの通りが唯一の大通りだったので、人通りも激しくて交易も栄えてたらしい。呉服屋さんも軒を連ねていて、華やかな時代もあったということ。今はその道を行き交うのも観光客がほとんど。けど、少しづつ地元でも、若い人が中心となって活気を取り戻しつつあるらしいので、今後が楽しみだ。やはり子供や若者のエネルギーって、地域の活性化には欠かせない要因のひとつではなかろうか。大人たちが、彼らが誇りにできるような暮らし方の見本をすっと示してあげれば、きっと自然と地元に愛着を持つはずだと私は思う。そして何か少しでも地元を復興させる力になりたいと思うはず...。実は私には地元、がない。というか正確に言えば、地元、という感覚を強く持ったことがない。小さな頃から転勤族で色んな地域を移動してきた。確かに大変な事も多かったが、逆にその事が私のidentityを作り上げる大切な要素になっていると信じてるし、あらゆる意味で感謝の気持ちも強い。なぜなら、それに付随する沢山の貴重な経験は、私の身体や心の一部となっているから。あえて出身は?と言うのならば、15歳から住んでいる柏市だろうけど、そこにも「幼なじみ」と言える友人は居ないし、地元、という感覚もあまりない。今回犬山市の城下町を訪れて、もし自分がこういう地域で生まれたとして、そこで育ち、そこでの地域社会に溶け込んでいたとしたら、どんな風だっただろうと想像してしまった。きっと「幼なじみ」も何人かは存在していて、「青年団」とかにも付属して、夏祭りにはおみこしを担いでたのかな、とか。そう言えば、九州の田舎に帰省した時も、たまにこんな想像をしてたなあ。


母と一緒にずいぶんと歩いて、途中のホテルで軽食をとる。犬山名物は?と思ったけど、実はあまり無いらしい。そのホテルのお庭にはとても非現実的な教会が建っていて、そこだけが妙に浮いていた。さらにそのホテルの敷地内には、国宝茶室である「如庵」がある。大茶匠である「織田有楽斎」が建てた、国宝茶席三名席のひとつであるという。私は茶道を嗜まないので全くもって知らなかったが、お茶を習っていた母はもちろん知っていたし、是非この茶室を訪れてみたいとのことだった。「有楽苑」を名付けられたこの場所には、いくつもの茶室が存在し、四季折々の日本庭園を楽しめるようだ。その中でも「水琴窟」と呼ばれる鉢の中に造られた粋な仕掛けが妙に面白くて、その繊細な音(水滴が垂れる度に微かな音色が聞こえる)を楽しんだ。後はお月見をするための台やさりげない竹林など、日本人が自然と融合して作り出した美意識の奥深さを感じた。「如庵」自体は、本当に狭くて小さな茶室で、中に入る事もできなかった。お茶に詳しい人なら、この茶室を見て何か特別な違いや雰囲気を感じるのかもしれないが、私にはさっぱり...。


犬山市を後にして、急行に乗り名古屋へ。荷物を預けたロッカーの位置がわからなくなり、駅をさまよって、結局1時間ほどロスしてしまった。急行に乗った意味なし!その位置がすんごく穴場的なところだったので(だから見つけ易いだろうと思った私もバカ)、方向音痴の私達としては2重に地獄のロッカー探しであった。すぐに新幹線に乗る。東京へ着いて、まっすぐ家路へ。東京はやや少し肌寒い気がした。今日こそは名古屋で是非美味しい食べ物を!!!という情熱も、結局近所のデニーズで散ってしまったが、なによりも、美味で濃厚な思い出を堪能できた。それだけで、十分に満足、満足。


最後に。この旅をひと味もふた味も美味しくなるようなスパイスを利かせてくれた、母とMには、心から感謝したい。






翌日、朝早めに支度をして出かけた。


昨日丸1日新しいスニーカーで私のかかとはボロボロだったので、Mからビーチ・サンダルを借りることにした。万博八草駅から噂の「リニモ」に乗る。無人運転だし揺れが少なくて、さすがリニア・モーター・カーだと思ったけが、その中は通勤ラッシュのよう。つかの間の景色を眺めてしのいだ。駅の周辺ではスピーカーを片手に大声でアナウンスを繰り返すスタッフがいっぱい。正直、そんなに大きな声で「走るな」とか「押すな」などをずーっと永遠に繰り返す方が、かえって人々の気持ちをカリカリさせるのでは?とそんな気がした。実際、すごくうるさくて迷惑なのだ。エキスポの会場に入るまでのゲート前でも、そんなアナウンスが目立った。入場する際、そして入ってからも目的のパビリオンへと焦る人用にしているのだとは思うけど。もちろん何か事故でも起こった際の保障問題に関係してくるだろうし、安全はもちろん大事。でも、もっと穏やかでスマートな方法が無いのだろうか?スピーカーから聞こえる声って、なんかコントロールされてるみたいで気持ちが荒む。学校の運動会の練習にも似てるような。いい加減もう良いよ!!!と何度思ったことか。


エキスポでは、まず荷物をドイツのパビリオンに置かせてもらって、すぐ隣のイタリア館に入る。母がそこで「踊るサテュロス像」を見たかったから。2000年以上前のブロンズ像は、もう今回が国外展示最後だと言われている、そんな美術品。リアルに踊っているポーズが、幻想的にライト・アップされていて、時代を超えてもイタリア人の美意識の深さってすごいなあと思った。そこからスタートしてクロアチア館、モロッコ館、そしてアフリカ館など、人が並んでいないところにはどんどん入ってみた。私達が意外にも気に入ったのはクロアチア館で、紐の切れた凧がクロアチアを旅するというコンセプトを、本物の塩を使用してイメージした塩田をスクリーンとして映像で見せるというもの。なかなかシンプルで個性に富んだ、そしてアーティスティックなパビリオンだった。その他、ヨルダン館では死海と濃度の同じプールを再現してそれを体験できたり、死海の泥を使ったエステなどが人気だった。モロッコ館では細かい手作業の工芸品の制作行程を見物できるし、その他実際に絵付に参加できたりするパビリオンもあった。基本的に各国で共通しているのは、民芸品/特産物の販売、ということ。装飾品から始まってお守り、香水、珍しいスナックや飲み物まで、もう何でもあり。あと、それぞれに国の特徴を生かした展示物を工夫する努力も見られたけど、経済的に豊かな国とそうでない国との格差が歴然としているのも興味深かった。例えば、ドイツなんかは万博のテーマに忠実に沿ったものをドイツらしく、ハイテク機材を生かして(例えば「ライド」という乗り物に乗りながら観賞)カラフルかつコンパクトに仕上げている。もう徹底的に計算され、効率良く「バイオニクス」の世界を体験できる。全体的に、観る側の立場に立って熟考したのが良くわかる。さすが!ドイツ!一方同じヨーロッパでも宗教的な内乱などが絶えない国や、アフリカや南米などの国々では、単にパネル展示だけだとか、民族衣装や生活用品の紹介、で留まっている。しかしそういう格差があるなかでも、伝統工芸や歌やダンスのパフォーマンスなどで人気を呼んでいる国もあるのが面白い。確かに、これって万博のテーマに関係ないんじゃ?というような不思議なコンセプトのパビリオンでも、一歩足を踏み入れればそこは異国のバザール、という感じで楽しめないこともないのだ。


結局、日本のパビリオンには殆ど入れなくて(というか、その行列にくじけて)、ただマンモスは並ばなくても観ることができた。「骨ではなく、ミイラ」という点では、実際に観れて得したな、という気分。あとは韓国館。入るのにちょっと並んだけど、3Dのアニメーションがものすごく面白くて感動した。入る前はちょと馬鹿にしてたけど、出てくる時は目がうるうる。もう一度観てみたい、あのアニメ。シンガポール館もイギリス館も結局行けなくて、母はアルゼンチン館でのフラメンコのパフォーマンスを期待していたのだが、時間が合わなかったのと、そこは本当にそれしか観るものが無かったので、それもわかり易くて笑った。かなり人工的ではあるけど、とりあえず散歩道、みたいな雑木林を探検して、自然を堪能。あっという間に時間は流れ、夕食はオーガニックの素材を使ったレストランで。そこのメニューが私好みで気に入った。妹夫婦が来る時は、是非ここで食事やお茶をしたら良いと思った。穴場だと思う。混んでないし。食器類もちゃんと陶器(シンプルで素敵な)を使っている。人気のあるカジュアルなお店だと、殆どがプラスチックや紙の食器だからね。


Mは先日、ドイツ館を視察に訪れた天皇・皇后両陛下をお迎えしたのだが、その際に美智子様からの質問を受けたらしい。日本語で。質問の内容自体はそれほど難しくなかったとか。でも終わった後しばらくして身体中がカーッと熱くなったらしい。その気持ちはわかる。その時はたぶん緊張で普通の状態じゃなくて、気持ちが緩んだとたん、ガーッと身体が反応するんだよね。そしてそんな貴重なチャンスが訪れるなんて、ものすごい強運の持ち主だなあ。


エキスポ自体、とても広くて沢山観るところがあるので、1日で全てを制覇するのはとても無理。Mも休暇を取ってゲストをアテンドする際に、毎回新しいパビリオン等を体験できるので勉強になると言っていた。すでに口コミや宣伝によって人気のあるパビリオンは何ヶ月も前から予約を入れたりするのが当たり前のようになっているらしいが、しかもそれだけを観るために何時間も並んで、結局それで1日終わりとか。もちろんロボットや新しいテクノロジーを体験して感動するのもよし、だけど、視点を変えてみるともっと違ったエキスポの楽しみ方があるのでは、とも思った。例えば、徹底的に「エコ」をテーマにして冒険してみると、食べ物から観るものまで変わってくる。あまり人には知られてない会場の中には、世界のNPO団体の活動を紹介しているものや、プラネタリウムのような感覚で休憩かつ楽しめるところ、森の中に作られた木の家など、面白くてためになる場所が沢山ある。列に並ぶ、というストレスからも解放されるし、リラックスして心も満たされそう。子供の教育にも二重まる。一緒に楽しく「環境」について学べると思う。


ということで、私達のエキスポ体験は、まず早朝に雨がザーザー降ったので(ビーサン履いてて正解!)、比較的1日中空いていたということも手伝って、かなり快適ではあった。あとはMが手際良く色々と案内してくれてことも大きい。ありがとう!帰りの電車の中で、隣同士で座っていた年配の仲良しさん達が、「あなた、何回目?」「私は今日で6回目よ~。」などど朗らかに話していて、す、すごっ!!と文字通りすごいものを観察するように眺めてしまった。



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